焦点 拘置所の23日間 孤立とつながりについての体験的考察 第3回【最終回】
私はひとりではない
尾上 義和
1
1社会福祉法人藤沢育成会
pp.76-84
発行日 2011年7月15日
Published Date 2011/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100893
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窓を開けると、鉄格子を通って涼しい風が吹き抜ける。たった3週間あまりだが、ここへ来たころに比べると少し風の冷たさを感じた。もう11月10日である。
いつもの朝食を終え、小さな洗面台で歯を磨き、顔を洗った。ちり取りとほうきで年季の入ったデコボコの畳を掃く。それを終えると、妻や仲間が差し入れてくれた15冊ほどの本──上橋菜穂子の『獣の奏者』、村上春樹の『1Q84』など──を読む。これが私の日課だった。
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