特集3 退院は、情熱だ !
南浜病院(新潟県)の場合―職員のなかの「退院なんて無理」「今のままがいいんだ」をくつがえす
菅 真司
1
1南浜病院・看護部
pp.36-47
発行日 2009年1月15日
Published Date 2009/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100570
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壊れかけのヒーター
正月も近いある日、病棟の暖房が停止した。看護職員は患者の布団敷きを手伝い、次々と患者を布団まで誘導する。老朽化した暖房機の故障が原因だった。一見信じられない光景だが、毎年冬に1~2回はこの作業が恒例行事となっていた。
当時の病院は大半が畳敷きの病室だった。ある朝、入院患者から「寒い」と苦情を受けた。経営者に相談したが「少し様子をみよう」と言われた。しかし「はい、そうですか」と言う気にはなれなかった。病棟師長に依頼し、病棟の中央と末端の部屋の室温を24時間測定してもらった。すると各室温には10℃以上の開きがあり、末端の部屋では最低気温が4℃を下回っていた。暖房器の限界が原因だと思った。しかし、病院に改善要求しても、大金のかかることは簡単に認めてくれない。「まず自分たちでできることをしよう!」と看護副部長と2人で末端の部屋の畳をめくった。畳の下は隙間だらけの板が敷かれてあるだけの簡素な床で、床下の換気口から入った冷気が板の隙間から吹き上げていた。基礎自体の問題だった。「これでは暖房を2倍にしても意味がない。看護の意地を見せよう!」と、全室の床にブルーシートを敷き、更にその上に大量の古新聞を敷いた。そして、冬場限定ですべての換気口を板で塞ぎブロックで固定した。
翌日から室温が7℃を下回ることがなくなり、患者からの苦情もなくなった。しかし、築40年以上のくたびれた病棟。いつもどこかで修繕工事を行なっていた(写真1)。
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