音楽でホッとひと息―現代人に贈る癒しの音楽
―マイスキー(チェロ)―シューベルト名曲集
竹重 敦
pp.833
発行日 1997年11月15日
Published Date 1997/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688902439
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シューベルトは31年という極端に短い生涯に何と600曲以上の歌曲を残した.「美しき水車小屋の娘」「冬の旅」「白鳥の歌」という有名な3大歌曲集の他に,名歌曲がそれこそ無尽蔵にある.単に量が多いというだけではなく,そのいずれもが珠玉の作品ばかりなのだから,これは大変なことだ.この仕事があったからこそ,後のシューマンを始めとするドイツリートの錚そう々たる山脈やまなみが形成されたのである.シューベルトの後に,彼を凌ぐような素晴しい歌曲が多数作曲されたことは事実である.先月紹介したシューマンの「詩人の恋」「リーダークライス」などは,その最高の成果である.
ところが不思議なことに,後の多くの作曲家の様々な優れた歌曲を夢中になって楽しんでいても,最後にはシューベルトに舞い戻ってしまう,結局ここに行き着いてしまうのである.メロディ優先の単純な歌の数々のようでいて,シューベルトの歌曲には歌というものの最も核心に迫る「本質的な何か」が秘められているように思われる.聴けども聴けども味わい尽くせない世界.これらは当然F.ディースカウの歌で聴いていただきたいところである.だが,今回はちょっと趣向を変えてみたい.
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