小特集 抑うつのある高齢者への訪問看護
高齢者の抑うつの概念
大森 健一
1
1獨協医科大学精神神経医学
pp.168-173
発行日 1999年3月15日
Published Date 1999/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688902300
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はじめに
高齢者の相対的,絶対的増加とともにその精神障害も増え,高齢者に対する精神医学的接近,精神保健の重要性がますます増大している.これら精神障害のなかでも,抑うつは痴呆と並んで重要であり,高齢の抑うつの患者は近年明らかに増加している.したがって,この抑うつに対する理解を深めることは,高齢者の看護,介護の上でも重要なことである.
しかし老年期の抑うつに大きな関心が払われるようになったのは意外に近年になってからである.それまでもその存在は知られていたものの,高齢者のうつ病に注意が向けられていたのは,特有な症状を呈する初老期うつ病・退行期うつ病までであった.それ以上の高齢者の抑うつは高齢者に多い脳器質疾患の一部の症状と見なされていることが多かった.しかしうつ病に対する診断と,特に抗うつ薬を中心とした治療法の発展が,改めて我々の眼を老年期の抑うつに向けさせるに至ったのである.
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