連載 使いみちのない時間・13
闇
丈久 了子
pp.74-78
発行日 2001年1月10日
Published Date 2001/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902385
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老女は,廊下をパタパタと歩く看護婦の足音で目が覚めた。時計を見ると,午前6時を指している。昨夜の睡眠導入剤が残っているのだろうか。頭の芯がすっきりしない。
いや,頭の芯がすっきりしないのは,薬のせいではない。8月のある朝,目が覚めたら病院のベッドに寝ていた。以来,頭の芯は,ずっと鈍く重だるいままだ。
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