特集 「対人援助困難」を克服する
事例から考える“看護婦の心理的巻き込まれ”について
佐藤 悦子
1
1山梨県立看護大学
pp.508-512
発行日 1998年7月15日
Published Date 1998/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688901834
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看護は,看護婦と看護される人との関わりのなかでなされる.一見単純に思われるが,このことが非常に難しい.なぜならば,互いにまったく異なった価値観をもった者同志の関わりの中で看護は実践されるからである.その実践は相手の価値観に添いながら,その人の考える幸福のために,その人にとっての健康を獲得することを支援するものである.専門職として看護が実践されるときには,その看護婦のもつ人生観・人間観に裏打ちされた考えのうえに,科学的視点からの判断が加わる.看護婦のもつ人間性そのものが実践に反映されるのである.
訪問看護の対象は患者個人だけでなく患者を取り巻く家族も含めた関わりである.訪問看護をしていくなかで最も困難を感じることは,患者と家族のこの価値観の食い違いであり,その中にどっぷりと入りこんでしまうと,どちらに向かって看護したらよいのかが見えなくなってしまう.“看護婦の心理的な巻き込まれ”である.
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