特集 24時間対応の模索と成果
部分ケアからトータルケアへ―24時間巡回介護サービスの実践から
榎本 憲一
1
1㈱コムスン
pp.97-101
発行日 1996年3月15日
Published Date 1996/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688901148
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24時間巡回介護サービスは要介護高齢者の最低限の生活を保障するもの
我々は,平成4年8月福岡市において24時間巡回介護サービスに取り組んだ.当時,ほとんどの自治体におけるホームヘルプサービス事業は,週1~2回,1回2時間程度ホームヘルパーが要介護高齢者のお宅に訪問し身の回りのお世話を行なうというものであり,その他の時間帯の介護は全て家族に委ねられていた.昨年,連合が全国の5,000人の要介護者を抱える組合員を対象に行なったアンケートでは,「在宅の要介護高齢者に対して虐待行為を行なったことがある」が,49.6%,「憎しみを感じたことがある」34.6%という数字が示されている.この数字が示すものは,不十分な社会サービスの中で24時間365日先の見えない介護を続けて心身ともに疲労の極みに達した家族の悲しい姿である.そして,そのいきつく所が,施設入所や社会的入院である.この場面では,高齢者は自らの意思を示すことは不可能に近い.否応なしに周囲の意思で自らの終のすみかが決定されるという現実に,介護サービスを通して日常的に直面していた.
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