特集 倫理的課題へのアプローチ—「倫理的」な看護はいかに実践できるか
—【新型コロナと看護実践の倫理❶】—会わないことをやめ、今だからこそ会おうと決意したこと
藤田 愛
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1医療法人社団慈恵会北須磨訪問看護・リハビリセンター
pp.266-269
発行日 2021年4月15日
Published Date 2021/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688201656
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「なんちゃってフルセット」での対応も迫られて
所長職に就いて17年間、いろいろな困難があったが、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)のスケールは比較にならない。新型コロナをわがこととして準備を始めたときには、もうサージカルマスクとエタノールがどこにもないタイミングだった。感染予防のための方法が分からぬ上、感染予防のための製品が入手できないことで、出だしから混乱した。
流行が拡大した緊急事態宣言地域だというのに、サージカルマスクは週1回しか配布できず、洗って使い回し、発熱、不調者の緊急訪問であっても“ないよりマシ”の代替品をかき集めた自称「なんちゃってフルセット」で職員に対応をさせていた。わが子を何の武器も持たさず戦地に送るような思いだった。あれほど職員の命の判断を担っている重みを感じたことはなかった。
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