連載 介護することば 介護するからだ 細馬先生の観察日記・第27回
こなれていない身体を見つめる
細馬 宏通
1
1滋賀県立大学人間文化学部
pp.898-899
発行日 2013年10月15日
Published Date 2013/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688102632
- 有料閲覧
- 文献概要
ときどき、グループホームに通い始めた頃のビデオを見直すことがある。我ながら恥ずかしい場面が多い。今だって気の利かないことに変わりはないのだが、数年前の自分の立ち振る舞いは、何もわかっちゃいないと思うほどぎこちなくて、冷や汗ものだ。
最初の頃、もっとも不思議に思ったのは、入居者のカワカベさんになかなか立ち上がってもらえないことだった(本連載第1回「真似で関係が動き出す」、本誌2011年8月号)。カワカベさんは、食事が終わってからテーブルについている時間がずいぶん長い。他の人がすっかりいなくなり、口をゆすいだり、トイレに行ったりして、居間でテレビを視る段になっても、カワカベさんは、飲み残しのお茶を何度も確かめ、ときどきどこか一点をじいっと見つめ、座り続けている。
Copyright © 2013, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.