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はじめに
平成14年5月9日の各都道府県知事あてに出された厚生労働省老健局長発「第2期介護保険事業計画の作成に併せた老人保健福祉計画の見直しについて」(老発第0509001号)では,平成15年度から平成19年度までを期間とする第2期介護保険事業計画の作成に併せて老人保健福祉計画の見直しを行なう際に勘案すべき内容として,(1)介護サービス基盤の整備,(2)介護サービスの質的向上,(3)介護予防及び疾病予防の推進,(4)痴呆性高齢者支援対策の推進,(5)地域生活支援(地域ケア)体制の整備,(6)高齢者の積極的な社会参加,(7)介護保険対象外のサービスに係る目標を定めるに当たって参酌すべき標準,(8)他の計画との関係,(9)見直し後の留意事項という基本方針が記されている。
このうち,(2)介護サービスの質的向上では,「量的な整備とともに,その質の向上を図る必要がある」とされ,サービスの質という面において「介護サービスに携わる人材の養成や就業後の資質向上のための研修体制の整備が重要な課題となる」との認識が示された。また,人材の資質向上の方策としては,「居宅サービスについては,その担い手である訪問介護員(ホームヘルパー)や訪問看護事業に携わる看護師等の資質の向上に取り組む必要がある」,あるいは「介護保険制度の円滑な運営のためには,制度の要である介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質の向上に取り組むことが必要である」との指摘がなされ,サービスの担い手に対する教育体制の整備が必要なことが明らかにされている。
さらに,①介護サービスに関する情報の提供,②評価事業の普及,③利用者からの苦情への対応,④ボランティアを活用した相談員(介護相談員)の施設等への派遣,⑤適切な契約締結の推進などに積極的に取り組むことが介護サービスの質を確保するために重要であると示され,介護サービスに対する評価や情報公開の必要性が明記された注1)。
この他にも,(4)痴呆性高齢者支援対策の推進の項では,「都道府県においては,痴呆介護の質的な向上を図るために,痴呆性高齢者の介護に従事する者に専門的な知識と技術を修得させる痴呆介護実務者研修を計画的に実施するとともに,痴呆介護の研修拠点を整備していくことが必要である」と示され,痴呆介護従事者の教育と「さらに,痴呆性高齢者グループホームに係るサービスの第三者評価にも積極的に取り組む必要がある」という第三者評価の必要性が言及されている。
以上のように,介護サービスの質への言及やその向上についての方策が示されたことは,介護保険制度実施から3年が経過し,ようやく介護サービスが量から質の議論へと移行しつつあることを示しており,介護サービスの質の向上において第三者評価システムが必要であるとの認識が市民にも醸成されつつある状況を表している。そこで,本稿では,とくに介護サービスの質の向上の方策の1つである第三者評価について,わが国の第三者評価の現状,その意義,今後の課題について検討した。
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