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はじめに
近年,経管栄養法や吸引,膀胱留置カテーテル管理など,さまざまな医療処置を必要とする在宅療養者が増加している。それらの療養者の多くは,高齢のために免疫機能が低下し,易感染状態にあり,今後在宅ケアにおける感染管理はよりニーズが高まると思われる。感染管理には,正確な知識と技術はもちろんのこと,ケアに必要な医療・衛生材料の十分な確保等の環境づくりも必要となる。1996年にCDC(Centers for Disease Control and Prevention)よりスタンダードプリコーションズ(Standard Precautions標準予防策)が出されて以来,病院を中心にこの予防策の実施にむけて,さまざまな取り組みが行なわれてきた。一方,在宅においては,療養者とその家族の生活の場でケアが行なわれるという特徴から,使用される医療・衛生材料等が不足している状態であること,滅菌や消毒が簡単かつ定期的に行なえないこと,使用した物品も家庭内で廃棄処分されているといった現状がある。以上の点をふまえ,在宅の感染管理における環境づくりの実態を把握する必要があると考えられた。
これまで,木村ら1)や全国訪問看護事業協会2)の調査によって,在宅ケアにおけるガーゼ・注射器・カテーテル等の代表的な医療・衛生材料の入手については,療養者自身や訪問看護提供機関が負担している部分が大きいことが明らかになっている。また,宮崎3)はカテーテル・注射針・バッグの廃棄方法について調査し,カテーテル・バッグの大部分と注射針の一部が,可燃ゴミとして出されている実態を示した。今回,訪問看護内容として比較的多く実施されている医療処置のうち,特に感染管理を必要とする①口腔・鼻腔内吸引,②気管内吸引,③膀胱留置カテーテル管理,④褥瘡処置,⑤胃瘻管理の5つのケアに際し,感染管理上必要と思われる医療・衛生材料等がどのように入手され,どのような状況で保管され,使用後はどのように廃棄されているのか,その実態調査を行なったので報告する。
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