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編集室から
本講演は2003年10月3日,社団法人北海道総合研究調査会(HIT)が,札幌市を中心に,居宅介護支援事業者および行政の介護保険担当者に呼びかけ,札幌市中央区「かでる2・7特別研修室」で開かれたたものです。
介護保険制度が始まってから3年半が過ぎ,利用者数,サービス利用量ともに概ね順調に推移しており,制度は定着しつつありますが,一方で,介護保険制度の「要」とされる介護支援専門員が,膨大な業務量により本来期待される機能を十分に発揮できていないという現状もあります。ケアマネジメント機能の充実が重要だという共通認識はあるものの,サービス利用者全員に対して,居宅介護支援サービスを等しく行ない,さらにその質も担保するといったことが果たして可能なのか,という疑問が現場にはあるようです。
本講演でロイツ准教授は,対象者のニーズの特性により,医療と介護の連携・統合の程度が異なることを述べ,その具体的なモデルをケアマネジメントの過程にそって示しています。密度の高いケアマネジメントは,それが必要である人に対してターゲットを絞って行なわれてこそ有効なのである,という氏の主張は,介護保険制度見直しの議論に一石を投じるものといえるでしょう。
私は博士の前にソーシャルワーク修士(MSW:Master of Social Work)を取得し,現在大学で研究・教育にたずさわっています。これまでどのような研究をしてきたのかを,表1にまとめました。3番目にあげてあるKaiser Permanenteのモデル事業についてですが,これは,Kaiser社では「2005年までに,要介護者がアクセスしやすい広範な在宅・施設ケアを提供できるよう,サービスを拡大する」という宣言を掲げ,いま実行中なのですが,そのためのモデル事業を97年から99年にかけて行ないました。また,最後の池上直己教授との共同研究は2002年に始まったもので,現在も継続中です。その内容は北海道の2つの町における医療と介護の関係を分析し,ケアマネジャーが利用者のニーズにいかに適切に対応しているかを調査・研究することです。
さて,本日のテーマは「医療と介護の統合」ですが,その必要性が言われるようになってきたのは,それほど古いことではありません。感染症対策を中心とした急性期の医療モデルから,生活の一部に医療が位置づけられるような慢性期の医療モデルが主流になってくると,必然的に医療モデルのみではなく生活(介護)モデルとの統合が不可欠になってきたのです。
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