連載 診療所日誌・6
神も仏もみんな集まれ……。
小笠原 望
1
1大野内科
pp.512-513
発行日 2005年6月1日
Published Date 2005/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100162
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ねぎらいの言葉がほしい
母の腰が曲がってきた。台所では伸び上がるようにして洗い物をする。「痛くはない。すくれる」と,腰の不調を訴える。「すくれる」とは土佐の言葉で,違和感というか伸びきらない筋肉の緊張感といったらいいのか。兄夫婦と同居しているが,今でも台所仕事は主に母がしている。81歳になった。
母が祖母を看取ってから,もう何年になるだろうか。祖母はアルツハイマー病だった。久し振りに家に帰ったぼくに,「あんたは,だれぞね」と何回も何回も声をかけてくる。社交的な祖母であったが,ぼくの目の前で鍋を焦がしたのが最初の物忘れだった。
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