特集 抑制・隔離は本当になくせるのか
ICU病棟における抑制―抑制の基準の必要性
道又 元裕
1
1東京女子医科大学病院中央集中治療部
pp.759-763
発行日 1999年10月10日
Published Date 1999/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686900908
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はじめに
医療の中で一般に使われている抑制(拘束,束縛):restraintという言葉について調べてみると,看護辞書では,自傷他害のおそれのある患者または小児の治療・処置などで運動を制限することであるとしている1).また厚生省においては,身体的拘束(抑制)とは,衣類または綿入り帯などを使用して一時的に当該患者の身体を拘束し,その運動を抑制する行動の制限を言う,となっている2).
ここ最近においては,この抑制=身体的拘束は人権侵害の問題も含めてさまざまな議論が広まっており,1998年10月30日には第5回介護療養型施設連絡協議会全国大会での抑制分科会で,「抑制廃止福岡宣言」が全国に向けて発信された.ついで1999年3月には,厚生省令で介護保険下の身体的拘束禁止規定が出されたことは記憶に新しいところである3.4).実のところ筆者は,このような宣言や規定が提唱されたこと自体に驚いている.つまり,もしかすると抑制しなくてもよい患者に対しても意味のない拘束が行なわれていたのだろうかとの懸念を抱いたのだ.人権を侵害しようとして行なわれている抑制ならば,すぐさま廃止すべきである.また,その動きに多くの関心と賛同が集められ,抑制廃止運動がさらに拡大してゆくことは当然のことであろう.
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