連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・214
ラオスの森から聞こえるうつくしい歌声
柳田 邦男
pp.902-903
発行日 2024年10月10日
Published Date 2024/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686202780
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「人は物語らないとわからない」という臨床心理学者の故・河合隼雄先生の言葉は,この欄でも紹介したことがあるが,その言葉の真実性は,人が遭遇する絶望や悲嘆をどう受容して生きるかという生き方や人生論を考えるときに重要であるだけでなく,世界のどんな民族でも古来持っている民話や伝説の誕生の理由を考えるうえでも大事な根拠になっていると言える。
ちなみに,世界中に広まっているイソップ物語の諷刺的な動物説話集は,紀元前6世紀頃にギリシャで創作されたものと伝えられるが,内容の似たような動物説話が,文化的交流のなかった世界の遠く離れた地域に生まれていたということは,人類の脳の言語機能のDNAのなかに,物語を創作するはたらきが組み込まれているのを示すものではないかと,私は勝手に想像している。
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