調査報告
分娩後出血のリスク因子のエビデンスの提示に対する臨床看護職の評価—Evidence Based Practiceの促進を目指した調査
比佐 加奈子
1
,
角川 綾菜
1
,
中西 愛海
1
,
廣山 奈津子
2
,
岩﨑 弓子
2
,
山縣 千尋
2
,
小笹 由香
3
,
深堀 浩樹
4,5
1前 東京医科歯科大学医学部保健衛生学科 看護学専攻
2東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科 看護システムマネジメント学分野
3東京医科歯科大学医学部附属病院 看護部
4前 東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科 看護システムマネジメント学分野
5慶應義塾大学看護医療学部
pp.694-701
発行日 2018年8月10日
Published Date 2018/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686201049
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
はじめに
Evidence-Based Practice(EBP)とは,「研究によるエビデンスと,臨床現場の専門能力,患者や家族の価値観を統合させ,協働で意思決定を行う過程」1)と定義され,看護領域での促進が望まれる。米国では臨床の実践者が主体のEBP促進のモデルとしてIOWAモデルがあり2,3),活用例として開腹手術後の腸蠕動音聴取の取りやめ4)や,手術時の手袋の二重装着の促進5)がある。
しかし,日本の看護領域ではEBPは十分には普及していない。EBPの個人的バリアには,研究に価値を感じないなどの「価値観」,文献検索能力の不足などの「スキル」の側面がある6,7)。また,組織的バリアとして時間不足,情報検索ツールへのアクセスや,英文献の読解という言語的な壁も指摘されている7)。
本調査ではこれらの阻害要因への対応となりうる活動として,学生のEBPプロジェクトが職員・学生の学習や大学と臨床現場の協働を促進する可能性8)に着目し,看護系大学の学部学生・教員・大学院生らが,文献の系統的検索,質の評価,結果の統合を行い,まとめたエビデンスを臨床看護職に提示する活動(便宜的にこの一連の活動をEBP活動と呼称する。この活動はEBPの促進を目的としたもので看護実践は含まない)を行い,その活動への看護職の評価を明らかにすることを目的とした。本調査から日本におけるEBP促進の示唆が得られることが期待される。
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.