- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
造血幹細胞移植患者に関わるナースプラクティショナーとしての私の大切な仕事のひとつは電解質の管理である。同種造血幹細胞移植でT細胞を除去していないグラフトを受ける患者では免疫抑制剤は必須で,特にタクロリムスやシクロスポリンといったカルシニューリン阻害薬を使用している患者では低マグネシウム血症になりやすい。また,造血幹細胞移植のコンディショニングに用いられる抗がん剤には嘔気,嘔吐,口内炎,下痢など消化器系を衰弱させる副作用のあるものが多く,患者は総じて低カリウム血症傾向である。移植急性期だけでなく,移植後の合併症としてよく知られるサイトメガロウイルス感染症の治療に用いられる抗ウイルス薬,特にフォスカルネットではマグネシウムやカルシウムをキレートして低マグネシウム血症,低カルシウム血症,低カリウム血症を引き起こす。さらに,制吐薬としてよく用いられるオンダンセトロンやメトクロプラミド,食欲亢進目的で使われるオランザピンはうっかりしているとQT延長していたりする(もちろんそうならないように定期的に心電図をモニタするが)など,電解質を正常に保つことは非常に重要なのである。
退院が近くなると,それまで点滴で補正していた電解質を経口摂取できるようにしていく。サプリメントで補うことも大事だが,日々の食事のなかで摂取できるよう,栄養指導も大事である。栄養指導は管理栄養士が行なうが,例示される食品が日本では典型的でないものがあったりして面白い。まずはオートミール。アメリカでは必ずといってよいほど朝食のメニューに挙げられるが,日本ではあまり見かけない。オートミール1食分(240cc)で61mgのマグネシウムが摂取できる。次は,グアカモレ。主原料はいわずと知れたアボカド。小さめのアボカド1/2個(60g)でマグネシウム20mg,カリウムが432mg摂取できるらしい。
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.