特別記事 被災地報告
―東日本大震災における東北大学病院の災害看護①―看護管理室の活動報告
石井 幹子
1
,
後藤 えり子
2
,
門間 典子
1
,
川原 礼子
3
1東北大学病院 看護部
2東北大学病院 高度救命救急センター
3東北大学大学院医学系研究科看護学コース 基礎・健康開発看護学講座
pp.211-216
発行日 2012年3月10日
Published Date 2012/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686102369
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はじめに
東日本大震災以前にすでに宮城県沖を震源地とする大地震の発生確率はきわめて高いものであったため,東北大学病院(以下,当院)では,災害時訓練も広域災害を想定し,危機管理体制もかなり現実性を視野に入れて検討してきた。また,5年前に完成した高層の新病棟は,完璧な耐震構造を誇るものであり,ハード面での備えも十分検討された態勢にあった。
しかしながら,今回の大地震は,われわれの想像できなかった規模の被害を引き起こした。高層棟でありながらエレベーター機能が大きく損なわれたのをはじめとして,断水や都市ガスの停止に伴う給湯システム,材料供給システム,および給食業務の停止などがあった1)。
また,今回の震災は津波による被害が甚大であったため,想定していた重傷外傷患者はほとんどおらず,日頃の訓練が活かしにくい状況であった。
発災直後は当院の看護部が得られる院外の情報は,非常用ラジオや患者のワンセグテレビ,および自分たちの携帯電話を介してのものであり,非常に限られていた。そのため外の状況がわからず,また,絶え間なく続く余震により不安と恐怖にかられたが,今だからこそ一層,医療の現場を支えなければならないという使命感や緊張感があった。その後数週間にわたり非日常的状況と戦う日々が続いたが,その経験はきわめて貴重なものと考え,各部署に提出を求めた取り急ぎの記録1)から,今回は看護管理的側面に焦点を当てて,対策本部看護管理室の活動について報告したい。
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