焦点 健康教育とヘルスプロモーション
自己コントロールとセルフケア
西田 真寿美
1
1佐賀医科大学医学部看護学科
pp.459-465
発行日 1997年12月15日
Published Date 1997/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900422
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健康と病気をめぐる課題は,疾病中心の医療から一般の人々の自主性を尊重した積極的な健康増進へと転換してきた。医療の領域における主要な関心事は,1970年代では健康問題に対する個人の役割や責任という側面に向けられていたが,1980年代後半からのヘルスケアの焦点は,個人の積極的な役割だけでなく,社会組織の連帯,互酬性,共同性に根ざした新たな方向づけが展開されてきた。1986年にカナダのオタワ市で開催されたヘルスプロモーションに関する国際会議では,人々が自らの健康をコントロールし改善する能力と,健康を支援する環境づくりや公的施策の重要性が強調されている1)。
このような動きの中でセルフケアへの関心は次第に拡がり,さまざまな領域でとりあげられてきた。日常的な健康習慣,健康維持・増進行動,病気対処行動,慢性疾患管理行動など健康のあらゆるレベルで適用されている(表1)。セルフケアの意味内容は多岐にわたり,その概念は必ずしも一致していないが2-5),共通して「一般の人々自身が自分たちの健康問題に主体的に対処していく積極的役割」を強調している。これらは専門的ケアを拒否するものではなく,一般の人々が自分のケアを可能な限り自分で行ない,専門的ケアを有効に活用する技術を身につけることの重要性を主張するものである。本稿では,ヘルスプロモーションにおけるセルフケアの意義について,コントロールという視点から考察を試みることとした。
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