解説
AIDS患者のソーシャル・サポートに関する文献
竹崎 久美子
1
,
大川 貴子
1
,
志自岐 康子
2
,
下平 唯子
2
,
南 裕子
1
1兵庫県立看護大学
2東京都立医療技術短期大学
pp.277-285
発行日 1993年4月15日
Published Date 1993/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900144
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はじめに
現在,全世界の人々に最も恐れられている疾患は,AIDS(後天性免疫不全症候群)であろう。AIDSに罹患した者は,極めて高い致命率を有する重症の免疫抑制状態となるが,現代医学ではまだ治療法を発見できておらず,感染予防教育に頼らざるをえない。この現状が人々にAIDSに対する過剰な脅威や恐怖を生じさせているようだ。「感染すれば必ず死に至る」という恐怖心は,AIDS患者やHIVに感染している者に対する敵意,あるいは偏見を生み出す。AIDSに罹患した者は,AIDSであると診断されたその瞬間から,確実に訪れる「死」への強い恐怖と社会的な疎外を同時に体験することになるのである。
人は誰でも他者との関係性の中においてのみ自分の存在の証しをみることができると言われている。人は他者のサポートなしには生きていけないものであり,「ある人を取り巻く重要な他者(家族,友人,同僚,専門家など)から得られるさまざまな形の援助(Support)は,その人の健康維持・増進に重大な役割を果たす」1)というソーシャル・サポートの概念は,病む人々の幸福や安寧に関わる最も基本的で重要な心理社会的因子であると言えよう。
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