焦点 人間—環境系の看護研究・2
解説
School Environmentに関する看護研究の視座
泊 祐子
1
1滋賀県立短期大学
pp.520-531
発行日 1991年10月31日
Published Date 1991/10/31
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900051
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はじめに
「School Environment学校環境」という言葉を「子どもの育つ環境」ととらえ,考えてみた。我が国においては1960年代(昭和30年代後半)からの高度経済成長期を迎えると,日本の子どもの育つ環境は大きく変化した。労働力として人々が都市へ流入し核家族化が進み,夫婦単位の生活が中心となり,共働き家庭が増加した。それは,地域の連帯感の薄れと生活水準の向上,生活様式の簡略化をもたらした。上下水道の普及完備や家電製品の発展,モータリゼーションのある生活によって,おとなたちにとっては日常生活が楽になった。しかし,それらの社会環境は,子どもにとっては生活のために家事を手伝わなくてすむようになったり,行きたい所に歩く苦労をしなくても車で連れて行ってもらえることなど,子どもの心身の育ちに与えた影響は多大であった。しかし,おとなたちは子どもの育つ環境の変化を予測し,事前に対処することができなかった。
医療技術のめざましい発達のおかげで感染症が恐い病気でなくなり,疾病状況も大きく変化した。高度経済成長以後,慢性疾患や小児成人病や子どもの心の問題など,教育・保育や医療の現場から「子どものからだと心が蝕まれている」1)現象が報告されている。
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