焦点 人間-環境系の看護研究・1
解説
Home Environmentsに関する看護研究—その可能性
近田 敬子
1
1京都大学医療技術短期大学部
pp.407-416
発行日 1991年10月15日
Published Date 1991/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900040
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はじめに
めざましい科学およびその技術の発展とともに,我々は無意識のうちに大気・水・土・生物などの破壊と交換に,物質的に豊かな生活を営んでいる。しかし今世紀後半になって,環境汚染が進む中で人間の利益のみを追及するあり方に疑問が投げかけられ,人間を生態系の一要素として,生態系全体を守るecology運動1)が活発化している。それでもなお,世界の各地で森林の破壊による洪水および砂漠化,そして気候の変化までも引き起こし,生態学的難民1)を生み出している。そのことは決して他人事ではなく,程度の差はあるものの,身近なわが生活環境である。
すなわち,これらの事実と無関係に現在の家庭環境があるわけではなく,今後もますます科学や技術は形を変えて発展を遂げるであろう。その科学や技術の進歩は社会や地域の形態に影響を及ぼし,さらに労働や家庭の生活状況に大きく波及するであろう。そして教育の場にも変化を来し,当然,人間の価値観の変容をもたらし,疾病の有無にかかわらず,我々の生活様式は変更させざるをえない状況までに立ち至る。環境激変の結果,いわゆる家庭機能の変化や崩壊がますます進むに違いない2)。環境行政もこれからが正念場を迎えるが,これらすべてを受けて,今後の看護は展開されるであろう。
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