書評
人間の弱さは文系・理系の区別を飛び越える—新しい倫理学の大胆な提案の書
池田 喬
1
1明治大学文学部
pp.152-153
発行日 2023年4月15日
Published Date 2023/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681202086
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弱い人間を前にした人間が自らの振る舞いについて考えるもの—これが本書の提案する「弱さの倫理学」である。弱さに寄り添う,という最近よくある話かと思うなかれ。この提案の中身は驚くべきことに「理系」の倫理学であり,文学部の一部に置かれている「倫理学」を学際的に作り直す大胆な試みなのである。
人間は弱い。体も心も脆い。しかし,人間はこうした弱さに技術で対抗してきた。衣服を作り出して身体を保護し,病気や死に対抗する薬や医術を編み出した。技術を科学と結びつけて飛躍的に発展させた。だが,この高度科学技術が数々の倫理的問題を生じさせている。
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