焦点 事例研究と看護における予測性
解説
精神科臨床における症例研究をめぐる諸問題
野沢 栄司
1
1千葉大学看護学部精神看護学講座
pp.241-245
発行日 1980年10月15日
Published Date 1980/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200621
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はじめに
精神科領域において,われわれが患者と出会うその出会い方は極めて複雑多岐にわたる。読者はまず入院している患者たちを思い浮べると思われるが,現在著者は入院患者を直接診療する立場にないので,外来での出会いが主体となる。外来といっても,病院の外来もあれば,精神科の外来診療所(クリニック)での外来,さらには保健所や大企業の健康管理の一環としての外来,緊急の電話などによる相談,患者の家族との応待など,多彩な場面があり,患者も老人から小児まで,さまざまな年代の人びとがいる。これらの多彩な出会いが1回だけで終わることは少なく,数回,数十回,あるいは何年間と1人の患者への接触が続けられる例が多い。
このような多様な面接場面と,繰り返され連続的に続けられる治療関係を考えると,患者との治療関係と,その治療関係が内包する問題がどのようなものであるかを検討しなければならなくなる。このように,精神医療を担う者にとって,自分が関係をもっている患者との治療関係の検討は,次の機会における対応をよりよいものにするために必須のものとなるのである。
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