研究
病気像(Disease Image)転換による慢性疾患患者への人間的配慮—小集団の話し合いによる試み
上野 矗
1
,
大串 靖子
2
1大阪教育大学
2弘前大学養護教諭養成所
pp.350-361
発行日 1972年7月15日
Published Date 1972/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200299
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I.患者心理への現象学的接近法と病気像
患者心理の研究は人としての患者理解とその理解のうちに同時に患者に対する人間的配慮を含まなければならない。なぜなら,患者がおかれた医療という場は病気の人の治療を目的とする臨床性***をのがれることができないからである。
ところが,従来の患者心理研究の多くはこの基本的要請に応えてはこなかったように思われる。その最大の理由は患者の心理という人間の事象に自然科学的な方法を適用するといった方法論上の誤りにあった。換言すれば,科学研究という名のもとに,患者を第三者的に対象化してみる,いわば患者を外側からとらえる客観的方法を適用してきたということである。そこでは,病気はなによりも医学的診断体系によって評価された客観的な有機体的事象としてだけみなされてきた。そのため、そこでの研究主題は,まず病気が患者の心理に及ぼす影響や逆に患者の心理が病気に及ぼす影響を生理学的機序を軸とする因果関係,あるいは推計学的処理を軸とする相関関係によって明らかにすること,次にそれらの知見に基づいて患者の心理治療を企てることであった。
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