焦点 隣接諸科学における基礎的文献
臨床心理学の基本的文献
小嶋 謙四郎
1
1早稲田大学
pp.100-103
発行日 1971年4月15日
Published Date 1971/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200229
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ナースのための臨床心理学の基本的文献をあげることは,たいへんむずかしい。
第1に,臨床心理学そのものの歴史が浅く,すべての臨床家が身につけなければならない基礎的な理論はまだ混とんのさなかにある。臨床心理学は言うまでもなく心理学の一つの部門であるが,心理学と臨床心理学の関係は,今のところ基礎と臨床といった有機的な関係にたっていない。たとえば現在の心理学の方法論の主流は,実験,観察,測定といった現代科学の動向に軌を同じくしているが,実験心理学で明らかにされた成果はなんら臨床に役だたず,また臨床場面で出会った特殊な問題は実験心理学者の関心の外におかれている。したがって臨床心理学の基本的文献として,心理学の総論をあげてもほとんど無意味に近い。ナースの養成カリキュラムに心理学がおかれていながらあまり看護の現場で実効があげられていないのも,このあたりにその理由の一つがひそんでいる。
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