特別寄稿
看護・看護婦の研究における一つの道—社会学からのアプローチ
北原 龍二
1
1東京教育大学文学部
pp.68-81
発行日 1971年1月15日
Published Date 1971/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200225
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はじめに
表題が示すようにこの論文も看護とは何か,そうしてそれに従事する看護婦とは何かという,古くて新しい設問に答えようとする試みの一つである。しかしここで用いる方法や論議の順序は,これまでこのような設問に対して用いられてきたそれらと大いに違ったものとならざるをえない。だがその違いはサブタイトルに示す社会学という個別科学の性格にだけ由来するわけではない。ここで行なおうとするのはことばどおり看護・看護婦とは現になんであるかの解明であって,なんでなければならないか,どうあるべきかの追究,提案ではない。そのような追究や提案が無意味であるとも,科学の領域からはみだした政策論であるとも思うものではないが,目下の課題は一見遠回りとも思える道をたどって,"なんであるか"をきちんと解明し,それを支える歴史的,社会的根拠を捉えるところにある。
看護とは何かという問いに対してこれまでに次のような答え方があった。すなわち看護とは患者の"ニードの充足","身の回りの世話","生活行動の援助","入院に伴うストレスの予防ないし緩和",そうして"診療の介助"などであるとし,また看護を行なう立場については"患者を社会生活を営む人間として見る","患者の全人格を看護の対象と考える","患者の利益を代弁する"などであるとすることであった。
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