解説
看護研究における文献活用の基礎・2—文献の具体的な利用法
橋本 秀子
1
1神奈川県立衛生短期大学
pp.305-310
発行日 1969年10月15日
Published Date 1969/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200154
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先号でも述べたように,文献そのものは自分の研究のフレームーワーク(わく組み作業)に重要な役割を果たす。すなわち,文献を読みあさることによって―それもできたら系統的に――いままでその問題がどのように扱われてきたか,あるいはどのような理解のされ方をしてきたかが,容易に理解される。よく言われる「ニュートンがリンゴの実の落ちるのを見て,地球の引力の存在に気がついた」という話は,それこそたとえ話以外の何ものでもないのであって,ニュートンはそれまでに数多くの物理学的な書物を読み,それらによってたどってきた物理現象理解のすじ道に,多くの矛盾を感じてきたのである。そして,その矛盾解決のいと口にリンゴのたとえが引かれたにすぎない。いままでの多くの発明・発見は,偶然に生まれたのではない。例をもう一つ,フレミングのペニシリン発見にみてみよう。フレミングはよく知られるように細菌学を学ぶ研究者だった。彼が実験室の片すみに,洗い忘れられていたシャーレに気づき,その上に生えた青カビの周辺から細菌のコロニーが消えていたことに気づいたのは,たしかに偶然であったに違いない。しかし,その現象について,なぜ菌が消え去ったかの理由を解明しようとして,多くの細菌学の論文にあたってみたのであった。しかしいままでの知識の中にはそんな現象を教えてくれるような知識は見当たらなかった。
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