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はじめに
医療の高度化に伴い,昨今では看護職にも高い専門性が求められるようになってきている。それらは専門看護師や認定看護師が広く浸透してきたことからもうかがい知ることができる。求められる専門性の高さは,学生に対し看護基礎教育が開始される時点にまで波及しており,結果として看護学生は過密カリキュラムのなかで,看護実践能力の習得が要求されている。
「看護基礎教育の充実に関する検討会報告書」によると,看護実践能力は20項目から構成されており,そのなかには「看護援助技術を適切に実施する能力」という文言があるように,学士教育における専門知識のみならず,適切な看護技術を提供する能力をも求められている(厚生労働省,2007)。また,看護学生の看護技術の習得が必至であることは,文部科学省の「大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会」での,「就労後の新人研修へと効果的に接続することができる教育内容を考慮する必要がある」という報告からも,その重要性を読み取ることができる(文部科学省,2011)。
しかしながら,看護技術を習得しなくてはならない側の学生には,技術習得の能力に個人差があり,そのための看護技術教育には個別指導が必須となるものの,大学という教育現場の限られた物的,人的資源のなかで,また大きな壁である限られた時間のなかで,個々の学生のレベルに合わせた看護技術教育を個別に提供し,完全に習得させることは困難を伴う。それを補う工夫として,効率的な看護技術習得のための学習支援システムを具現化することが可能であると考えられた。
当初は,学生の手技を撮影した動画を活用し,学生は自己評価をし,教員は助言,指導をすることで個別指導を行なっていたが,教員による個々の学生の動作の確認には,撮影と同じ時間を費さざるを得ないという難点があった。そこで,撮影された学生の動作のなかから,教員の助言や指導が必要とされる箇所を迅速に抽出できるシステムがあれば問題を解決できると考え,先の実験において学生の行動を識別するための手段として,3軸加速度センサを応用することを試みた。その実験結果から,3軸加速度センサを学習支援システムに用いることの有用性が示唆された(北島ら,2010)。
本稿では,先の実験結果を踏まえ,学習支援システムを具現化していくための一端として,3軸加速度センサの適用が可能な看護技術は何かを特定する試みについて述べる。
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