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はじめに
車椅子移乗介助技術は,「看護基礎教育の充実に関する検討会報告書」(平成19年4月)によると,看護師教育の卒業時到達度として,「看護師・教員の指導のもとで患者の機能に合わせてベッドから車椅子への移乗ができる」とされている。しかし,看護基礎教育のなかでは,活動・休息援助技術として比較的早い段階で教育されることが多く,初学者の学生が習得することの難しい技術の1つである。
初学者の学生が車椅子移乗介助技術を習得する際には,患者の安全を最優先するとともに患者の安楽,自立性に配慮し,さらには腰痛負担の軽減等を踏まえ,ボディメカニクスに留意した学習が必要となる。車椅子移乗介助技術は,患者の重心移動に合わせて看護師が重心移動を行ない,かつ腰部への負担を最小限にした介助方法が求められるが,学習する時点において学生自身は自己の身体の使い方を身につけておらず,効率的な身体の使い方を学習することも目標となる。
看護基礎教育において,カリキュラムに定められた演習時間内だけで技術を習得することは困難であり,学生の積極的な自己学習が必要となる。自己学習には,教科書や視覚教材を用いることが多いが,知識として理解しても,学生自身が自己の実施した技術を客観的に評価できなければ,効果的な自己学習につながらない。特に車椅子移乗介助技術においては,自己の身体の使い方を身につけていない学生が自ら評価することは難しい。そこで,自己の実施した技術をタイムリーに評価しフィードバックする自己学習支援システムがあれば,その技術習得の向上が期待できるのではないかと考えた。
筆者らはこれまで,加速度センサを用いて,看護技術の自己学習支援システムを構築するための研究に取り組んできた。加速度センサを用いて識別可能な看護技術の特定を試み(北島ら,2010),最もふさわしいのは車椅子移乗介助技術であることが,前稿でも示された。本稿では,システムの構築に向けた基礎資料とするために,臨床看護師の行なう車椅子移乗介助技術の現状について研究を行なったので,紹介する。
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