- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
はじめに
私は,高齢者の疼痛管理に関して興味をもち,博士後期課程入学後の現在も,研究や勉強に取り組んでいる。近年,介護施設入所の高齢者の高い疼痛有症率とともに,不適切な疼痛管理の実態がたびたび報告されており,このことは各国共通の課題であるといわれている(Reynolds, Hanson, DeVellis, Henderson, & Steinhauser, 2008 ; Torvik, Kaasa, Kirkevold, & Rustøen, 2009 ; Zwakhalen, Koopmans, Geels, Berger, & Hamers, 2009)。しかし,高齢者においては,運動・認知機能障害や痛みを我慢することなどにより,疼痛アセスメントが困難な場合も多い。そのため,疼痛に関連した行動の観察により,疼痛をアセスメントするための尺度が数多く開発されている(Zwakhalen, Hamers, Abu-Saad, & Berger, 2006)。
私たちは,そのなかの1つであるアビー痛みスケール(The Abbey Pain Scale)について,日本語版尺度の開発と検証を行なっている。アビー痛みスケールは,言語的に疼痛を訴えることのできない認知症高齢者の疼痛について,施設で働く介護・看護スタッフがアセスメントできるように開発された尺度であり(Abbey et al., 2004),高齢者の疼痛管理に関するガイドラインなどでも紹介されている(British Pain Society and British Geriatrics Society, 2007 ; The Australian Pain Society, 2005)。この日本語版尺度の検証についての研究論文作成中に,本学の「看護学国際人育成教育プログラム」により,3週間のオーストラリアへの派遣が決まった。
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.