調査報告
生体肝移植術を受けた成人レシピエントの術後精神症状の実態とドナーとの関係
一宮 茂子
1
,
赤澤 千春
2
,
高橋 昭代
1
,
米田 千佳子
1
,
原田 敬子
1
1京都大学医学部附属病院
2京都大学医学部保健学科
キーワード:
生体肝移植
,
術後精神症状
,
ドナーセレクション
,
抑うつ
,
退行
Keyword:
生体肝移植
,
術後精神症状
,
ドナーセレクション
,
抑うつ
,
退行
pp.517-522
発行日 2003年10月1日
Published Date 2003/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100224
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緒言
当院では1990(平成2)年に小児の胆道閉鎖症に対して第1例の生体肝移植が行なわれた。1996(平成8)年からは成人に対しても行なわれるようになり,2000(平成12)年12月には小児・成人の生体肝移植が641例目に達した。成人の生体肝移植はその対象疾患・経過・患者背景がさまざまであり,移植後の経過も多様である。そうした患者を看護するなかで,生体肝移植を受けた成人レシピエントが術後早期からのせん妄とは別に,術後しばらくしてから抑うつや見当識障害などの術後精神症状を発症する症例を経験した。この術後精神症状は,内容や発症時期において,一般的な術後せん妄などの精神症状とは違った印象があり,肝移植後の治療過程を妨げる一因となっている。その発症の原因として生体肝移植の術後管理に特徴的に使用される免疫抑制剤やステロイド剤の影響,代謝機能の異常などによる影響,手術の特殊性からくる患者個々の心理的な要因などが考えられる。しかし,免疫抑制剤やステロイド剤は生体肝移植術を受けた患者全員が使用していることから,心理的要因の影響が大きいと推測した。そのなかでも,成人レシピエントにとって心理的影響を与えると考えられるドナーとの関係に着目した。
そこで今回は,生体肝移植術後の成人レシピエントに生じる術後精神症状の実態と心理的要因に影響すると考えられる患者背景,ドナーについて調査,検討した。
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