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はじめに
これがあると助かるという「お助け本」が刊行された。『Publication Manual of the American Psychological Association』,通称「APA(第5版)」の日本語訳が実現したのである。この訳本『APA論文作成マニュアル』(医学書院)には,論文作成のための基本的な知識や技術,英語論文の投稿に関する研究者としての必要な情報が丁寧にまとめられている。特に,書式に関する基本的・技術的なルールや引用文献リストに関連する一般的な注意事項は,詳細な説明と多くの凡例を配しているので,必見の内容であると思う。日本語の論文を書くにあたっても,ここまで懇切丁寧に解説されたマニュアル本にお目にかかったことがあっただろうか。このように,初心者にとっても親切な記述が,今でも米国の大学の多くの看護学部で提出されるレポート書式に,「APAスタイル」が指定されるゆえんではないだろうかと内心思っている。
ところで,日本語を母国語とする我々日本人が,本書を手にとって英語論文作成に挑むのは,科学論文の共通語が英語だからである。研究者として,得られた研究成果を発表するのは,一般的に英語である。日頃使い慣れた日本語であれば,微妙な言いまわしや表現なども比較的容易でよいのだが,より広く世界の研究者や実践家へアイデアやデータを発信したり交換したりする手段としては,英語論文を作成し,英文誌に掲載される必要がある。
論文作成から英文誌掲載まで,本書の内容をあらためて見直しながら,この1年半の間,私が微力ながら携わってきた『Japan Journal of Nursing Science』,日本看護科学学会の新たな事業である英文誌発刊の工程がよみがえってきた。ここでは,論文作成の最終段階としての英文誌掲載までの過程を追いながら,それに関わる情報や私も新たに知ったルールについて知見をシェアしたいと思う。
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