特別記事
三つ子の1人への傷害致死事件を考える—母親の苦悩と孤独を救える助産師に
服部 律子
1,2
1岐阜県立看護大学育成期看護学
2NPO法人ぎふ多胎ネット
pp.574-577
発行日 2019年7月25日
Published Date 2019/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665201308
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はじめに
報道などでご存知の方も多いと思いますが,2019年3月15日,名古屋地方裁判所岡崎支部は三つ子の二男を死亡させたとして,被告人の母親に対して,3年6カ月の実刑判決を言い渡しました。判決では,「うつ病に罹患する中で,負担の大きい三つ子の育児を懸命に行っていたと認められ,……(中略)……同情できる点も少なくない」としていますが,弁護人の主張する「三つ子の育児の支援が不十分であった点」は考慮されませんでした。
私は弁護側の証人として,多胎,特に三つ子育児の困難さと支援の必要性,そして本件における支援の不十分さを証言しました。弁護側としては支援が届かない過酷で孤立した育児環境の中で起きた事件であり,防ぐことのできた事件だったと考えています。特に看護職としては,妊娠期からの経過をたどっても親身になって寄り添う看護職の姿を認めることができず,大変心を痛めているのです。
本件はあってはならない悲しい事件であり,失われた命の重さと家族の悲しみを考えると,母となり父となる家族を支える助産師は要となる役割と責任を担っているのだと強く思います。と同時に,この事件から学ぶことによって,妊娠期から切れ目ない助産師のケアが支援の隙間に落ちる母と家族に届くように,今取り組んでいる産前産後ケアや地域の子育て支援活動などの充実は喫緊の課題だと思います。本件を振り返り,なぜ支援が届かなかったのか,どんな支援が必要なのかを考えてみたいと思います。
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