研究・調査
母乳育児に対する母親の肯定的な認識が哺育状況に及ぼす影響―北関東の産科2施設における追跡調査
向田 麻里
1
,
前田 由衣
2
,
入山 茂美
3
,
山﨑 真紀子
4
,
濱嵜 真由美
5
,
本多 洋子
6
1聖母病院
2長崎大学病院
3名古屋大学医学部保健学科
4長崎大学大学院医歯薬学総合研究科
5国際医療福祉大学福岡看護学部
6前 桐生大学短期大学部
pp.344-349
発行日 2011年4月25日
Published Date 2011/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101871
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
生後6か月間に完全母乳育児*をすることは,母児にとって健康,栄養,免疫,心理,経済などの各分野から有益である1)。母乳は,児にとって生後6か月間に必要な栄養であり2),消化しやすく,理想的な栄養である。さらに,抗体,免疫因子,酵素,白血球等の免疫システムを強化するための種々の物質も含んでいる3)。母乳育児は母親の健康においても利点があり,出産直後は子宮収縮が促進され出血が減少する。また,オキシトシンによる作用や直接肌が触れ合うことで母親と児の絆が形成されやすくなり,育児をする上でも母親にとって自信や満足感を得ることができる。さらに,母乳育児は人工栄養と比較すると,経済的に安く,簡便であるという利点がある4)。
このように完全母乳育児には多くの利点があり,96.0%の妊婦が母乳で育てたいと希望しているが,母乳育児率は産後経過するに従い減少する傾向にある5)。産後0か月に48.0%だった母乳育児率は,1か月には42.4%となり,3か月には38.0%,6か月には34.7%まで減少する。母乳育児を希望しているにもかかわらず,継続できない要因には,「母乳不足感」「乳房トラブル」「母児の健康状態」「知識・情報不足」などが報告されている6-9)。これらの要因をふまえて,母乳育児支援を実施している施設もあるが,十分な母乳育児率の上昇に至っていない。
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.