連載 バルナバクリニック発 ぶつぶつ通信・37
妊婦アガンとの出会いと私の葛藤
冨田 江里子
1
1St. BarnabasMaternity Clinic
pp.356-357
発行日 2007年4月25日
Published Date 2007/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100923
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行き当たりばったりの人生
貧困のなかでも自分本位で生きている大人たちがたくさんいる。子どもの世話もせず,お酒,タバコ,博打。こういう人が病気になったとき,いつも私は葛藤する。
巡回診療先の1つに離島の漁村がある。ここで私は妊婦アガンと出会った。アガンは2日前に大出血したという。訪ねると家の前で,壊れた椅子に脱力したように座っているアガンがいた。出血量は土色の顔色や肩で呼吸している様子からも想像できた。足はかなり浮腫み,しびれて感覚がない。家の裏で2歳になるやせた泥だらけの末っ子が裸のまま,無表情にずっと土いじりをしている。
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