連載 新生児ケアの不思議考証・Evidence & Narrative Based Neonatal Care
第2回 標識法
横尾 京子
1
1広島大学医学部保健学科
pp.460-464
発行日 2004年5月1日
Published Date 2004/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100741
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はじめに
新生児の標識について改めて問題意識を持ったのは,病院見学の際に偶然,新生児の胸部中央に大きく母親の姓が黒字で書かれていたのを見たときだった。もちろん,新生児標識法として児体に直接名前を記入することは知っていたのだが,それはせいぜい足蹠(足のうら)だった。なぜここまでするのだろうか,どんな経緯があったのだろうかと,尋ねてみた。すると,「今までやってきたことだから……。でも書くほうも気がとがめている」という返事であった。ちなみに,しばらくして,この施設でも児体記入は行なわれなくなった。
その時以来,児体記入法が脳裏から離れない。とりあえず情報収集をしてみたところ,意外にも児体記入を実施している施設が多いのである。取り違え防止とはいえ,児体記入でなければならないのだろうか。新生児を1人の人間として尊重した行為とはいえないのではないだろうか。こんなへんてこな疑問にとりつかれた筆者は,学生にもその話をした。学生たちは新生児標識法を卒業論文のテーマとして取りあげ,後輩に引き継いでくれている。
今回はまず,学生たちと実施した文献や実態調査の結果をもとに,新生児標識法の基準が定められた昭和40年代における児体記入の必要と,今日における児体記入の必要性と課題について検討した。
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