特集 第27回ICMブリスベン大会レポート
[助産師から助産師へのインタビュー]
笑顔を取り戻したカンボジアの助産師たち
橋本 麻由美
1
1国立国際医療センター国際医療協力局
pp.1118-1119
発行日 2005年12月1日
Published Date 2005/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100337
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カンボジアの戦後復興と日本
カンボジアは,かつてはインドシナ半島のリーダー的存在であったが,1970年のクーデター以降,長く政変や軍事行動が繰り返され,経済・保健指標とも悪い最貧国となった。その結果,笑顔もモラルも消えた。和平協定後の1991年に,日本政府はカンボジアの復興を願い協力を開始した。母子分野では,1995年から助産師の人材育成に協力してきた。日本の助産師がカンボジアに滞在し,助産の技術伝承に加え,母と子およびその家族の幸せについて,カンボジアの助産師と共に知恵を出し合ってきた。
ICM大会でのカンボジア
助産師との再会
寝食を共にしたカンボジアの助産師マダム・タとナリさんとは,約2年ぶりの再会であった。彼女たちは,同じ施設で働き,仲良くICM大会に参加しているが,2人の背景は全く違う。マダム・タは,今でも電気も水道もないカンボジア北部地方の出身で,国立看護/助産学校で教育を受け,30年以上の助産師歴をもつ。「カンボジアで初の看護部長」である。高い地位であるが,公務員の彼女の給料はとても安い。一方ナリさんは,内戦前は首都に住むお嬢さんであったが,ポルポト政権後は,ひとりでタイ国境難民キャンプ地に行き,そこで,NGOから助産師教育を受けた。その腕前はしっかりしているが,保健省には助産師としては登録されていない。通訳として働く機会が多い彼女は,公務員の看護部長の約10倍高い給料である。
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