レポート
腹圧性尿失禁の予防に向けたフランスの取り組み―「産後の会陰部の再訓練法」および「ド・ガスケ的アプローチ」の概要
シャラン 山内 由紀
1
1助産師・フランス在住
pp.1054-1060
発行日 2005年11月1日
Published Date 2005/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100322
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はじめに
近年,日本の産科領域においても腹圧性尿失禁に対する調査・研究1-4)が行なわれている。一方,フランスでは1980年代から既に理学療法を中心とした「会陰部の再訓練法(Rééducation périnéale)」が確立5)され,産後の訓練は国家レベルで推奨され,実践されてきた。現地でのこの訓練の実体験から,私は会陰部の保護と再強化の重要性を再認識し,日本でも同様の取り組みがなされたなら多くの女性がその恩恵に与るとの確信をえた。ただ,特殊な医療器具を使って行なうフランスでの実践をそのまま日本に導入することは,法律,設備,教育などの面から現時点では困難であろう。
そうしたなか,ド・ガスケ医師の存在を知り,彼女が提唱する「呼吸と姿勢と会陰部を同調させた会陰部の保護・強化法(ド・ガスケ的アプローチ)」にたどり着いた。その理論の特徴は,次のように要約できる。➀会陰部を呼吸器系の一環と捉える新しい概念である,➁会陰部を呼吸器系に導入することで,会陰部の表層から深部に至るまであらゆるレベルの筋肉を強化できる,➂会陰部と身体のさまざまな生理的機能(呼吸,脊柱伸展,横隔膜,骨盤の傾け,腹筋など)との関係が明らかにされている,➃その理論は伝統的なお産の正当性を裏付けるものである。
以下に,会陰部の再訓練法に関するフランスでの実践の経緯について簡単に触れ,続いて,ド・ガスケ医師が提唱する理論の概要を紹介する。
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