特集 産後のかかわり,もっと気にしませんか?
産後の心の健康を考えたケア―エンパワーメントの視点から
大久保 功子
1
1信州大学医学部保健学科
pp.386-393
発行日 2005年5月1日
Published Date 2005/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100201
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女性を1人の人間として支援する
母性本能や理想の母親像と,母親である現実との間にはギャップがある。それを世に知らしめたのは女性たち自身(主にフェミニストたち)だった。女性の心の健康を子どもの育つ環境と捉え愛着を促進する支援一辺倒から,ようやく1人の人間として心の健康という側面にも目が向けられ,1990年前後を境に,産後うつ病への支援方法が検討されるようになってきた。
妄想や幻聴,錯乱状態などを伴う産褥期精神病は早期の入院治療が必要で0.1%,ホルモンの激変による正常な反応であるマタニティブルーズは60%の女性に起こる。後者は臨床でも良く出会っている。産科領域からも精神科領域からも見落とされてきたのは産後うつ病で,産後6週の時点で13%もの女性が苦しんでいることがわかってきた1)。単一の疾患なのかどうかでは意見がわかれる。しかし,女性の生涯でも他の時期に起こるうつ病とは異なり,お産というきっかけが明らかなことから,予防が可能ではないかと考えられ始めており,助産婦の取り組まなくてはならない課題になってきている。
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