調査報告
全国自治体で実施されている父親への育児支援の現状
髙木 悦子
1
,
小崎 恭弘
2
,
阿川 勇太
3
,
竹原 健二
4
1帝京科学大学医療科学部看護学科
2大阪教育大学健康安全教育系教育学部教員養成課程家政教育部門
3大阪総合保育大学児童保育学部乳児保育学科
4国立成育医療研究センター研究所政策科学研究部
pp.306-310
発行日 2022年8月10日
Published Date 2022/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664201854
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はじめに
■わが国の父親育児参加推奨の取り組み
わが国の母子保健事業は、乳幼児・児童虐待防止の観点から、2000(平成12)年の児童虐待防止法制定により母親への育児支援としての役割が強化され、全国で子育て世代包括支援センターの構築が進められている1)。また、1999(平成11)年に男女共同参画基本法が施行されて以来、父親が育児に参加することへの期待が高まり、母親の育児不安と家事・育児労働の軽減を目的として推奨された。さらに2010(平成22)年に始まった厚生労働省のイクメンプロジェクトによって企業への働きかけが強化され、父親の育児休暇取得率も増加傾向にある2)。
■父親が育児に関わる近年の状況
しかし、2013(平成25)年ごろから父親の産後うつが指摘されはじめ3)、最近では実父による乳幼児・児童虐待の増加が報告されている4)。父親による虐待事例はマスコミでも取り上げられ、国民の認知も高まってきたが、父親への育児支援の制度は十分とは言い難い。現在の母子保健事業の主な根拠法令である母子保健法および児童福祉法には父親の育児支援に対する規定がなく、育児期世代の男性は自治体につながりにくいという事情もある。さらに父親への育児支援が、どこでどのように実施されているのか明確ではない。
このような近年の状況を受けて、父親育児支援の実施機関の一つとして、母子保健事業を担う自治体での父親に対する育児支援の現状を明らかにすることを目的として、全国地方自治体への調査を実施したので、ここに報告する。
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