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はじめに
停滞する経済と加速化する少子高齢化という環境下で,わが国の地方自治体は高度高齢社会に対応する新たな街づくりを求められている。こうした危機感を反映してか,国は種々の調査やモデル事業の実施を従来にも増して増加させているように思える。しかしながら,限られた人的資源でそうした調査やモデル事業に地方自治体が十分に対応することは困難であり,消化不良に終わってしまっている事業も少なくない。
2010(平成22)年に厚生労働省老人保健局は,高齢者対策を各自治体の状況に応じて行っていくための基礎資料作成を目的として「日常生活圏域ニーズ調査」を開始している。そして,モデル事業での分析結果を受けて,2011(平成23)年度にはこの調査を介護保険事業計画の見直しのための基礎資料と位置づけて,その実施と分析結果の計画への反映を求めた。しかしながら,この調査結果を介護保険事業計画や地域の高齢者対策にいかに活用すべきかという具体的な指針が不十分であったために,一部の先進的な自治体を除くと,その活用は限定的であったというのが実情であろう。
確かに,質問項目の多さや,他の既存資料との関係性が必ずしも明確でなかったこと,そして費用負担の問題もあり,多くの自治体はその実施に及び腰であったように思える。しかしながら,この調査はこれまでの調査に比して格段に情報量が多く,うまく活用すれば非常に有用な資料となるものである。こうした問題意識から筆者らは日常生活圏域ニーズ調査のデータ化支援システムをAccess(データベースソフト)上で開発し,そのプログラムを2011年度の老人保健事業の成果として,全国の市町村に配布している。
残念ながら,このシステムはこれまでのところ十分に活用されているという状況にはない。ただし,筆者はいくつかの自治体の担当者から「せっかく集めた日常生活圏域ニーズ調査の結果をもっと上手に活用したい」という要望も受けており,この調査結果活用のための支援ニーズは大きいと考えている。
そこで筆者は,ExcelとQlikViewというビジネス支援ツールを用いて日常生活圏域ニーズ調査のデータを解析する方法について整理し,それを自治体関係者対象の勉強会で実習形式で説明するという試みを行っている。これまで福岡県や高知県で実践しているが,半日の実習でほぼ全員が実用的な解析用ファイルを完成することができるようになっている。
そこで本稿では,こうした手法を多くの自治体関係者に活用してもらうことを目的に,これまでのセミナーで使用している資料をもとに,日常生活圏域ニーズ調査の解析手法について説明する。
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