特別記事
コミュニティを支える保健師のちから―“遠慮がちな”ソーシャル・キャピタル論から
今村 晴彦
1
1慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科
pp.1070-1077
発行日 2010年12月10日
Published Date 2010/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664101495
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
はじめに
長野県の保健補導員との出会い
約21.6万人。人口210万人ちょっとの長野県で,保健師や医師とともに地域の保健活動を推進する「保健補導員」という地区組織活動を経験した住民の数(1973~2007年の推計)である。計算上では実に住民の10人に1人が経験者であるという,この数字の“すごさ”を解明することが,著者の研究課題であった。
本論に入るにあたって,若干の自己紹介をお許しいただきたい。筆者は,企業や健康保険組合向けに,医療費や健診データにもとづいたヘルスケアサービスを提供する仕事に従事していた。そこで痛感したのが,どんなにいいサービスを提供しても一方的な指導だけではどうしても限界があり,対象となる組織や集団のメンバーによる主体的な実践が必要だということであった。
その後,会社を退職して大学院に進み,そこで出会ったのが冒頭に述べた長野県の保健補導員組織であった。長野県は住民の医療費が少なく,かつ長寿の「健康長寿の県」と言われているが,その大きな原動力となったのが,この保健補導員による主体的な保健活動であったと言われている。現在では年間1万人以上が活躍し,かつ県内のほぼ全域に組織がある。さらに,それが何十年もの間,任期制(多くの場合2年)で交代しながら続いているという。「ここに大きなヒントがある」と思った。
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.