連載 New Public Healthのパラダイム―社会疫学への誘い・9
社会のありようと健康(2)―ソーシャル・キャピタル
近藤 克則
1
1日本福祉大学社会福祉学部
pp.721-727
発行日 2004年9月1日
Published Date 2004/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100469
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誰にでも仕事がしやすいとか,居心地がよいとか感じる帰属集団や職場,地域(以下,これらを束ねて“コミュニティ”とする)と,そうでないコミュニティとがあるだろう.一般に周りの人々を信頼することができ,困った時にはお互いに助け合う関係(互酬性)があるコミュニティのほうが,働きやすく住みやすい.そして,積極的な交流のあるコミュニティのほうが,問題の共有や解決のためのアイデアが生まれ,共に問題解決のための行動に移すことにつながる.その結果,いっそう連帯感や信頼感が高まるという良循環が生まれる.
コミュニティにおいて,構成員が持っているこのような信頼感や互酬・互助意識,ネットワークへの積極的参加などが“ソーシャル・キャピタル”と呼ばれるものである.共通利益のために協力する社会的能力1),組織文化や組織の底力2),ご近所の底力や共同体の効力感(collective efficacy3)),社会統合・結合(social integration/cohesion4))などと表現されるものと重なり合う概念である.
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