連載 ニュースウォーク・144
保育所入所待機―“潜在”という陰の数字
白井 正夫
1
1元朝日新聞
pp.272-273
発行日 2010年3月10日
Published Date 2010/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664101357
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もう20年前になるが,新聞の取材でキューバを訪ねたことがある。国の経済を支えていたソ連(当時)からの石油輸入が途絶え始めたころで,配給食料を求める騒然とした行列がハバナの街でいくつも見られた。生活窮乏を外国人の私さえ感じるなかで,市民から「ハイチよりましさ」という声を聞いた。カリブ海でキューバ島の東隣,イスパニア島にある国である。
そのハイチの首都で大地震発生と知り,真っ先に思い浮かんだのが「貧困」という言葉だった。耐乏生活に追われていたキューバ国民にすら心配されるほどだから,その程度はおおよその察しがつく。しかし,インターネットで次々届く被災映像を見ても貧しさの実感が伝わらない。M7.0の揺れが貧しさも何もかもを押しつぶしてしまったように見える。
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