教育のひろば
自然科学と教育の場
堀 一男
1
1東京教育大学
pp.1
発行日 1966年2月1日
Published Date 1966/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905560
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自然科学の教育は子供の時代から,子供の体験を通じて発展させるべきことがよくいわれ,子供の内から科学するものを引きだすように働きかけて教育するのがよいといわれ,なるべく外から与えてしまわないようにすることが主張されている。これは子供を放任し,子供の心から自然にめばえることを期待していることではない。また逆に,子供に勉強を強制するものでもない。子供は無限の発展性をもっているので,正しい目標と正しい方向づけとによって,子供の内から無限の発展性を引きだすことができることをいっているのである。
自然科学は記述する学問である。現在の自然科学の進歩は,人類数千年の経験の蓄積のたまものである。人類が経験したことを記述し,それをうけつぎ.さらに発展させるところに自然科学の教育がある。自然科学的態度を学ぶには,実験観察を通じて体得するのが一番よい。しかし,実験観察により体得される科学的知識はかぎられたものであり,このような態度で,現在まで人類が蓄積した知識を体得するには,あまりにも人生が短かすぎる。人類が蓄積した知識を十分に体得しないうちに人生は終ってしまうでしょう。蓄積した知識に,さらに少しでも新しい知識をつけ加えようとするには,はやく知識を身につけてしまうことであり,そして,できるだけはやく科学の先端までたどりつくことである。
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