社会と看護
医療サービスと経済成長
江見 康一
1
1一橋大学
pp.41-44
発行日 1964年1月1日
Published Date 1964/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905229
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経済成長の姿
経済成長という言葉は,もともとイギリスの経済学者マーシャル(A. Marshall)が,国民経済の伸びてゆく姿を植物の成長になぞらえ,有機的成長というような概念で捕えたのに始まる。植物の成長は茎の長さで,人間の肉体的成長は,身長や目方によって測られるが,一国全体の経済は,国民所得の大きさによって測られる。国民所得というのは,平たくいえば国民一人一人の1年間の稼ぎ高を合計したもの,といってよい。この国民所得の大きさを,毎年毎年並べていくと,景気のよい時には大きくふくらみ,景気の悪い時にはその伸び方が弱まったり時には前より縮まったりすることがあるだろう。しかし10年,20年という長期間をとって眺めてみると,多少のでこぼこはあっても時の経過につれて国民所得は次第に大きくなっていく傾向を持つであろう。この傾向を経済の成長という。ただし長いあいだには物価もまた上昇していくであろうから,物価の影響を除いた国民所得の大きさ,すなわち実質国民所得の大きさを並べて見るのでなければ,経済成長の正しい測り方はできない。いま仮りに昭和35年の実質国民所得(昭和30年の物価を基準として)が10兆円,同じく昭和36年のそれが11兆円であるとすると,昭和35年から36年にかけての経済成長率は10%というように表現する。(普通経済成長率というのは,10年とか15年の期間の長さについていわれ,1年くらいの変化は増加率というのが正しい)。
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