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アメリカにおける精神科看護の動向
佐々木 耕子
pp.44-47
発行日 1963年10月1日
Published Date 1963/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663904451
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はじめに
早いもので,帰国してからすでに満2年を経過した。渡米前,準備のために日本の精神病院のあちこちを見学していた頃のある時,それは夏の暑い最中であった。某病院の女子患者が一部屋に集まって裁縫をしているそばで,年配の看護婦が,皆の後からうちわであおいで風を送っているのを見て,何か非常に心暖まる思いをしたのである。そして,その時は,この事実をあまり気にもとめずにいたのであるが,しばらくして,実際に米国の病院にはいり込んでみると,規模の違い,看護婦の不足などからくる日本にあっては,想像もつかないような場面に遭遇して(もちろん,これは全部ではないが),さきのうちわのことなども思い合わせて,これでは日本の患者の方が,よほど幸せではないかと思ったことであった。この感じは,滞米中,たとえかなり高いレベルにある病院に行っても,確固として変わらなかったが,帰国して,今度は現実に職務にっき,いろいろ見聞したりしていると,かつての好印象に疑問を感ぜざるをえなくなってしまった。
いったい,何がそうさせたかを,米国のあり方とも比較しながら,反省していたのであるが,それは,あるいは特に精神科看護のみならず,精神障害者に接する,全職員の当面する根本的な問題でもあり,すでに私たちの間でも,叫ばれていることであるかもしれないが,この機会にもう一度再認識することも,意義のあることのように思われる。
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