講座
機械文明時代における職業人の意識—人生との取り組み方
松田 ふみ子
pp.87-90
発行日 1961年2月1日
Published Date 1961/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663903983
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〈アメリカ人の合理性〉
現代は機械と人間の競争時代だと私は思う。科学の発達は機械の進歩をはかったが,その科学といい,機械というのも人間の頭脳から生まれたものでありながら,その機械に競争しなければならないというのも皮肉なことである。親が自分で生んだ子供にうしろから追い立てられ,あるときはリードされあえいでいるようなものだといえよう。だがこの二つが両々相まって利用し合い,助け合うことができてはじめて社会が一そうの発展をとげるのである。
それが全く上手にできている国はアメリカで,アメリカは,何しろ人間の少ない国だから,人力を節約するために機械を巧みに使っている。アメリカは広さが日本の約21倍で,人口は日本の2倍というのだから,機械の助力がなければ能率が上がらないのは当然,飛行機を3分間に1機の割でとばしてスピードに生き,陸には自動車が国民3人に1台の割で作られている。町には機械で量産されるレデイメイドの服が大量に,あらゆるサイズのもとに売られている。こういう国では,人間はあまりものごとを深刻に考えない。ひたすら人間に役に立つものに価値がある,というプラグマティズムが幅を利かせ,それが尊いと考えられている。そういうわけだから自然,人間は仕事にスピードを出し,能率を上げることが要求される。
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