講座
カウンセリング—学生指導のケースを例として
早坂 泰次郎
1,2
1立教大学
2立教大学学生部
pp.38-42
発行日 1961年1月1日
Published Date 1961/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663903972
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1.
学生指導の新しい技術の一つとして,カウンセリング(相談面接)がわが国の教育界に紹介され,導入されたのは,戦後なお日の浅い昭和23年ごろであった。教育の民主化の波にのって,それはたちまち広い関心を集め,普通教育の過程においても,専任のカウンセラーをおく学校があらわれた。昭和28年ごろからこの“新しい波”は大学にもおよび,東京大学(教養学部),立教大学などに開設された学生相談所においては,カウンセリングを積極的にすすめることによって,学生生活の実態にふれ,学生指導に資することとなった。これは一つには戦後の各界における民主化運動のあらわれであって,国家主義的教育から人間本位の教育へという歴史的展開であるとみることもできるであろうし,また一つには,戦後の社会的混乱ないしは社会変動が学生生活にもたらしたさまざまの不満や不安が,従来おこなわれてきた(あるいはむしろ,あまり真剣に考えられてこなかった)大学生の学生指導に大きな転換を余儀なくさせたからであるともみることができよう。さらに数年前には,産業界でもカウンセリングの導入のきざしがあらわれ,現在では専任のカウンセラーの制度を設けた会杜が2〜3にはとどまらない状況である。したがってカウンセリングに関する書物も今では十指にあまるほどである。
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